6月(東京平均気温21.8℃)

梅雨の季節。新芽がほぼ固まって成長は一段落する。
充実期に入り、挿し木・取り木など繁殖の適期、温度・湿度の高まりにつれて、病害虫が増える。

1.梅雨時の挿し木(梅雨挿し)
年間で一番湿度の高い月で、常緑広葉樹類の挿し木には良い時期。
この時期の挿し木は本年生の枝を挿すが、クチナシ、ジンチョウゲ、サツキなど発根の容易なものは開花後の新梢が3本くらい固まった前年生の枝をそのまま挿しても活着し、早く大株に仕立てることができる。
<6月に挿し木できる樹木>
キャラボク、チョウセンガヤ、ドイツトウヒ、スギ、サワラ、トベラ、マサキ、ツバキ、サツキ、ジンチョウゲ、リュウキュウツツジ、クルメツツジ、オオムラサキ、アオキ、カクレミノ、モクセイなど。

2.樹木移植の注意
針葉樹の移植は5月までに終えるのがよく、6月は新芽が伸びているので好ましくない。落葉広葉樹の移植は行わない。
常緑広葉樹は、上旬から中旬にかけて移植の適期。ヤシ類、ソテツなど暖地性の木は移植の適期。
<6月に移植することができる樹木>
アオキ、イヌマキ、エニシダ、オガタマ、カクレミノ、カシ類、カルミア、キョウチクトウ、クスノキ、クチナシ、クロガネモチ、サンゴジュ、シュロ、ソテツ、タラヨウ、シャクナゲ、トベラ、ドラセナ、ニッケイ、マンリョウ、モクセイ、モチノキ、モッコク、ヤシ類、ユズリハ、ヤツデなど。

3.庭木の剪定

①生垣の刈り込み
新枝が長く伸びて見苦しくなっているので、中旬以降に1回刈り込みを行う。刈り込みは今年伸びた新枝の基部を少し残す所まで刈る。
上に伸びている枝を長く残すと丈は高くなるが枝が粗になって密度の薄い生垣ができるので、バッサリと刈り込む。
ビナンカズラなどのつる物生垣は枝先を軽く刈り込むとよく、スギの生垣の刈り込みなども6月が適期。

②花木類の剪定
アオキ、ヤツデ、ナンテン、カクレミノなどは幹から不定芽(茎の節間などから出る芽)を出す性質があるので、この時期に葉のついている節の所で切れば新芽を吹いて仕立て直しができる。大きくなりすぎた枝を元から切るか、あるいは切り戻して高さを調節する。地際から出る枝を伸ばして形を整えるのも良い方法。
オオデマリ、コデマリ、シジミバナ、ユキヤナギなどは、なよなよした風情が大切なので、新しく伸びた枝で、まっすぐに立ち上がった樹形を乱す枝(立ち枝)は切る。
カイドウ、ボケ、ザクロなどは、節間の長い、組織の軟弱な枝(徒長枝)が伸びてくるので、元から切る。新枝も長過ぎるものは軽く先端を切り戻す。
花の済んだアジサイはそのまま残しておけば冬にドライフラワーとして楽しめるが、不要な時は、花が終わったら花首の下に葉を二枚つけて切っておく。冬に丸く膨らんできた花芽の位置を確かめてその位置まで切り戻す。
クチナシは、開花後の切り戻しを急ぐ。
花芽の形成が間もなく始まるので遅くなると花がつかなくなる。
強い刈り込みは避ける。
ツツジやサツキは翌年また枝が飛び出すのでやや内側まで切り戻す。

③常緑広葉樹類の間引き剪定
幹のあちこちから芽(不定芽)を吹く。放置すると上部の勢力を阻害するので不要なものは切り取る。
地際からも枝(俗にヤゴ、ひこばえ)が伸びてきて放置すると幹が衰弱するので早めに切り取る。
ザクロ、サンゴジュ、ウメ、サクラなどはよく出すので注意する。
樹種によってはこの性質を利用し、逆に地際からたくさん枝を出させて(叢生)幹をなくして刈り込み仕立てにすることもある。
常緑広葉樹類はこれから夏にかけて枝が込み、うどんこ病やその他の病害の原因にもなるので間引き剪定を行う。

4.病害虫の防除

①イラガ
雑食性の害虫で、カイドウ、カキ、ナシ、リンゴ、サクラ、ウメ、カエデにつく。特にカキの葉に好んでつき葉縁から食害する。
冬は樹木の枝の分岐点に卵形のからをかぶったまゆの中に幼虫態で越冬する。体色は黄緑色で突起があり、とげに触れるとぴりぴりと痛む。スミチオン乳剤などの散布が有効。

②マツケムシ
幼虫のままの形で地上で越年しているが、5〜6月になると樹上に這い上がり、大きくなると7〜8cmになり、葉を食害する。
暗褐色で毒毛が密生しており、高い所での被害は見つけにくい。
かなり食害されると下にふんが落ち、葉も透けてくる。
スミチオン粉剤を散布する。

5.秋植え球根の掘り下げ
秋植え球根類は葉が黄ばんでくる。葉が1/3くらい黄変したころが掘り上げの適期だが、2〜3年くらいは掘り上げない方が球根の傷みが少ないので、排水の良い芝庭の中や植え込みの間に植え込んだものはそのままにしておく。
プランターなどで花壇を作った場合は、球根と球根の間に苗を植えてもよい。

7月(東京平均気温25.4℃)

梅雨が明けて庭は夏らしくなる。
雑草の繁茂が激しく、晴天続きで灌水頻度が高まる。

1.芝生の手入れ
温度も湿度も高い7月は、日本シバが最もよく伸びる時期。雑草も勢い良く繁茂するので除草する。芝刈りも10日に1回行い、乾燥時には灌水を行う。

2.花木の剪定
フジは花の後から長いつる枝が伸びて棚の上が乱雑になる。あまり早く切ってしまうと花芽がつかなくなるので、7月中旬以降〜8月の間に込みすぎたつる枝の先を切り、間引き、切り返しによって棚を透かせる。あまり強い剪定は行わない。
サツキ、ツツジ類は刈り込みを急ぐ。
タニウツギ、ハコネウツギはこれから強い徒長枝が立ち上がってくるので間引きする。開花枝は来年も花芽を持つので、元葉二枚を残して先端を切り戻しておく。
エニシダも開花枝には実ができて黒いさやをつけているので、古株を適当に切り透かす。
コブシ、モクレン、サンゴジュ、ザクロなど多くの樹木は6月に続いてひこばえを出すので早めに切り取る。
モクレン類やライラックなどで、台木から芽が出てくる台芽を放任しておくと勢いが強いので地上部が衰弱して枯れてしまうので切り取る。
生垣が伸びすぎて乱雑になり見苦しいものは刈り込みを続ける。

3.病害虫の防除
①カイガラムシ
沢山の種類があるが、7月から8月にかけて産卵するものが多い。薬剤散布の適期であるが、ロウ状物質で覆われているので有効な防除法法は手にとる駆除となる。マサキやモチノキなどにつくルビーロウムシ、ツノロウムシなどは竹べらで書き落とす。
カエデにつくワタカイガラムシ、ナンテンにつくイセリヤカイガラムシなどは柔らかいのでブラシでこすり取れば簡単に駆除できる。

②タケケムシ(タケノホソクロバ)
ナリヒラダケによくつく。1〜1.5cmくらいで淡黄緑色の幼虫がタケの葉を主脈だけ残して食い尽くしてしまう。葉裏に楕円形薄緑色の卵がついているので早期に発見して処分する。さわるとぴりぴりするので注意が必要。

③モッコクのハマキムシ
モッコクの大害虫で、冬はさなぎで越冬し、新芽が伸長し始めると若葉を集めてその中に入り、葉を食べて全体を丸坊主にしてしまう。葉をつづり合わせて蓑のようになっており、薬剤を散布してもあまり効果がない。被害枝を切り取って幼虫を捕殺する。体長は2cmで乳白色の幼虫で、遅くなると若葉を集めた中にふんと一緒にさなぎになっているので切り除いて処分する。

4.秋咲き球根の植え付けとパンジーの種まき
7〜8月は、ヒガンバナ、リコリス類、ネリネ、ベラドンナリリー(アマリリス・ベラドンナ)など、秋咲き球根(夏植え球根)の植え付け時期。
ナツズイセンなどを除き、寒さに弱いものが多いので、冬は風のあたらない南向きの壁沿いなどの花壇が適する。ヒガンバナ類は球根の中では乾燥に弱いので、掘り上げ貯蔵はできない。
新しく購入して植える場合は早めに入手してすぐに植え付ける。
冬・春花壇のパンジーを種から作りたい場合は、7月の末に種を冷蔵処理し8月に種まきする。

8月(東京平均気温27.1℃)

アメリカデイゴ、キョウチクトウ、サルスベリなど、暖地性の花木が庭を彩る。

1.庭への灌水
酷暑の気候で、灌水が必要。庭木の根元に十分に灌水する。

①庭木への灌水
庭木の葉にホコリが付着しているので、ホースによる灌水時に圧力(葉水)をかけて落とす。日中は庭木自身が葉を垂れて水分の蒸発を防いでいるため、昼間の灌水は水分の蒸散を促して逆効果となる。葉水は早朝か夕刻に行う。
葉水だけでは水分補給とはならないので、庭木へは植え込みにホースを置き、水を出し放しにして地中に吸い込ませるまで行う。

②地中に灌水する設備
庭木には、地表面よりも地中深く水を補給する必要がある。暗渠用の穴開き陶管や、塩ビ管などを地中30〜40cm程度に埋め込みその中に粗い砕石を詰めて注水する。

2.庭木の手入れ
6〜7月の間に庭木は十分に茂るので風に対する抵抗力がなくなり、台風がくると倒れやすい状態になっている。
9月に入ると危険なので常緑広葉樹やカエデ、アオギリなどの樹冠の広がりの大きい木は間引き剪定を行い、風の通りを良くして倒伏を防ぐ。
カシ類などの常緑広葉樹は7月以上に徒長枝が伸びて樹形が崩れてくるので込みすぎた枝や乱雑な枝の間引きを行う。
モクセイ類は8月の末に花芽が分化して9月下旬〜10月上旬にかけて咲く特殊な開花タイプに属するため、春のうちに刈り込むのはよいが、この時期に強剪定は行わない。通風が悪いと花つきが悪くなるので込みすぎた枝を間引く程度に止め、早めに行う。

3.マルチング・幹巻き
夏庭は乾燥が激しく庭木や草花は元気がないが、これは水分蒸散を抑制するための自衛手段なので心配はないが、水分の補給や地熱上昇を防ぐことは必要で、マルチング(敷きわら)を行う。
落葉、雑草、芝くずの乾燥させたもの、コモ、わら、ピートモスなどを根元に敷きつめてやる。雨天時の泥はねも防げるので、春に植えたばかりの庭木には効果的。
灌水は敷いたわらが濡れるだけでは地表面に達しないので多めに行う必要がある。
春先や梅雨期に移植した庭木はまだ活着が不十分で、夏越しがヤマになるためマルチングとともに幹にコモ、わら、幹巻き用の布テープなどを巻いて保護する。
アオギリ、ケヤキ、カエデなど樹皮の薄いものや常緑広葉樹で樹冠を切りつめて幹が直接日光にさらされているものなどは、強い太陽光線の直射を受けて傷むことがある。これを皮焼けという。
幹巻きは皮焼けを防ぐために行うもので、移植した時点で行うことが一般的であるが、夏に元気のなくなった樹木にも効果がある。なお、庭木が元気を回復したらすぐに取り除かないと病害虫の潜伏場所になって逆効果になる。

4.夏挿しを行う
夏挿しはツバキ、サザンカ、ジンチョウゲ、スギ、エンコウスギ、カイズカイブキ、リュウキュウツツジ、サツキ、サルスベリなどが適するので、夏季剪定で間引きした枝を使って挿し木する。ツバキはすでに花芽が分化しているので、葉芽のある枝で木質化したものを、15〜20cmに切り、鹿沼土や砂などに挿す。乾燥させないようにビニルで覆うと発根しやすい。

5.夏花壇の整理と秋花壇作り
サルビアや、マリーゴールド、ペチュニアなどの夏花壇の草花は、本来秋遅くまで咲き続ける種類だが、早めに植えつけた花壇では株が傷んで寂しくなるため、暑さで傷んだ株は、枝を切り戻し根元に化成肥料を混ぜた土寄せを行い整理する。傷みが激しい花壇であれば、作り直したほうが手早い。
8月はパンジーの種まき時期。7月に冷凍処理しておいた種をまく。